2024年12月23日(月) 21:41 JST

千円拾た。

道を歩いていたら千円札が落ちていた。
一瞬目を疑ったがまぎれもなく千円札だ。
足元をひらひらと横切るたった数秒の間に
いろんな思いが駆け巡る。

拾って交番に届けたところで持ち主が現れる可能性は低い。
かといってポッポナイナイ(自らの懐に入れる、の意)して
使ったところで、何だか気分がすぐれないだろう。
正義感とか道徳心とか、そんな大それたものではなく
ただ単に精神衛生上よろしくないと思った。

そんなことが頭をよぎる状態でなんだか見てはいけない物を
見たような感覚に陥り、拾うべきかどうか迷いながら
一度は素通りした。

5千円や1万円なら拾ったあとの事など考える間もなく
まずはとっさに拾っていただろう。
反対に小銭なら正直ポッポナイナイしていたかもしれない。

「 ここで素通りするということは
  かえって千円札に対して失礼にあたるのでは?」

と思い直して風に転がる野口英世さんを追いかけた。

拾ってからもしばし迷う。
たかが千円、されど千円。
結局すぐ近くに交番があったこともあって
届けることにした。

「 拾得物、裸の千円1枚!」
応対してくれたお巡りさんが、電話で本部とやりとりする。
一通り調書とった後に渡された書類は「 拾得物件預かり書 」
もし落とし主が現れなかった場合にコレが必要となる。

「 落とし主、たぶん見つからないやろな、ムフ♪」

これが「 財布 」ならそうは思わないんだろうけど。

「 千円拾って、心にシコリを残さぬ方法で我が物にする。」
私は善人でも悪人でもない、ただの小心者だ。