2024年12月23日(月) 03:49 JST

れじぇんど?

職場件実家のお話。
( ぬいいとさんは、実父、姉夫婦の商売である食堂で
  毎日働いている。)

振り出した小切手(結構高額)の金額が
忘れないようにカレンダーに赤字で書かれてあるのを見て
オヤジがのたまう。

「 この米屋の\64,050.-は、明日まわってくるんやな?
  昨日の支払いは全然足らなんだしなぁ。
 まぁ、あの売り上げじゃぁ、しゃぁないわなぁ。
  ワシが出したお金、余裕できたら返してください。
 カァ〜!キビシい世の中になったなぁ!」

こうやって文章にして書き出すと、ネガティブな状況だが
私はこの父のボヤキを聞きながらこう思っていた。

よくぞここまで戻った。」

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お客さんが使った湯呑みを洗うところで
オヤジが自分のはめている入れ歯を洗う。
洗い場のお湯に何やら得体の知れないモロモロを残して
オヤジは涼しい顔をして入れ歯をはめながら立ち去る。

ぬいいとさんと実姉 keshidama さんが怒る。

ぬ「 あ!おとうちゃん、またあんなとこで入れ歯洗ってるで!」

ke「 え〜!?いやぁ〜ん!もう!
  油断もスキもあったもんやないわ!」

ぬ「 ひぇ〜!なんか変なもんいっぱい浮いてるし!」

ke「 あ〜ん、またお湯換えなアカンやん。」

ぬ「 まぁでも、自分で勝手に入れ歯洗えてるだけマシか?」

ke「 そやな、あんなん『 洗ってくれ 』言われても
   こっちはイヤやしな(笑)。」

クックックッと笑う姉妹ふたり。
今にして始まったことじゃない諸々のオヤジの非常識行動も
今はオヤジ復活のバロメーターだ。

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1月に手術、そして3週間入院していたオヤジ。
高齢者の長期入院は周りが思う以上に本人にとって
ダメージがかなりキツく、衰えが急速に進んでいくと
主治医の先生から説明をうけた。
筋力ももちろんそうだが、何より思考回路の衰えも
想像を絶するほどだという。

病状が完全に回復しない状態で「そちら」の方が心配になって
本人、主治医、家族同意の上でメインの病気の治療も
そこそこにして入院生活を切り上げてきた。

入院中は今日が何月何日なのかとか、業者さんの名前だとか
餡を炊くときの砂糖の分量だとか、売り上げ計算だとか
半世紀以上やってきたことまであやふやなになっていく
状態だった。

退院したあとも、あれだけ毎日買い出しに行っていた
スーパー玉出の名物「 1円セール 」も
「 なんじゃ?それ。 」
と、忘れ去っていた。

ほどなく、今度は厨房をキリモリする義兄がダウン。
1日も休む余裕がない台所状況。
カラダがキツいから休みたいというオヤジを
なんとかなだめて「 お客様入場制限モード 」で店をあける。

「 くれぐれも無理のないように、ご近所散歩する程度にね。
 特に転倒には気をつけてあげて。」
退院時にこういって送り出してくれたマキ子先生。
まさかこんなスパルタリハビリになってるとは
夢にも思ってないだろうな。
なんて、冷酷非情な娘たちだ。(笑)←笑い事やない。

それでもボケボケながらも身体で覚えていることは鉄板。
ゆっくりながらも、注文の合間にいちいち腰をかけながらも
うどんや丼をあげていく。

「 あんたら、寄ってたかってワシを殺しにかかってるんか?」
マジ顔でつぶやくオヤジ。
痴呆症に見られる被害妄想を差し引いても
この発言は的を射てたかもしれない。
「 リハビリ 」と言うにはあまりにキツい退院後の生活だった。

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「 もう、おはぎ作ったり品物あげたり、なんてことは
  まず、でけへんやろな。
  もしかしてボケボケで夜中徘徊?」
入院中の状況を見て、そう覚悟を決めていたのだが
娘たちが強いた冷酷なほどのリハビリのおかげで
多少の天然ボケはあるものの、入院前レベルの生活まで
戻りつつあるオヤジ、89歳である。