2024年12月23日(月) 05:07 JST

探偵ごっこ・結

(「 探偵ごっこ・起
 「 探偵ごっこ・承
 「 探偵ごっこ・転 」よりつづき。)

「 家系図 」を辿るのにも出費が生じる。
歴史が浅く、移動の少ない人物ならば数百円で済むのだが
歳を重ねてるほど、そしてアチコチさすらっている人物ほど
その「 家系図 」の枚数は増えてくる。
ここに至るまでの出費は自力で動いているにもかかわらず
ざっと四千円弱。
なんてこたぁない主婦にとっては結構イタい金額だ。

もし「 尋ね人 」がさすらいの旅人ならば
この先もある程度の出費を覚悟しなければ。
あ、免許証のコピー、この際だから5・6枚とっておこう。
封筒もたくさんいるかもな。百均で買っておこう。

尋ね人捜索が難航することを予測して準備を進める中
調査を依頼していた鳥取から書類が届いた。
もし「 尋ね人 」がさすらいの旅人だとしたら
また次の地に調査を依頼しなければならない。
ぶっちゃけ、出費が痛い。

「 さすらいの旅人でありませんように。」

そう願って鳥取からの便りを開けると
「 家系図 」が1枚だけ出てきた。
昔文字の漢数字をゆっくり目で追うと最後にこう記してあった。

『 尋ね人さん、昭和の時代に、ふなっしーの生地にて死亡。』

…ぬいいとさんの探偵ごっこ、あっけなく終了。

「 さすらいの旅人 」を願わずも大いに想定していただけに
なんだか右脳に左脳に、そして心にぽっかりと
穴があいてしまった。
最初は煩わしいとさえ思った「 尋ね人 」なのに
もう会えないと解ると、後から寂しさがじわじわと襲ってきた。
残念である。

天に召されてもう30年以上も経つ彼の「 その後の家系図 」は
たいそう簡素なものだった。
命日は、この探偵ごっこが終わった日の6日後とあった。

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早速「 同志 」の彼女にも結果を知らせる。
彼女も私と同じ思いでいたようだ。

「 え!?なんで亡くなったん!?なんで船橋なん?!」

「 家系図 」に何もかもが載っていると勘違いしたE子が
食らいついてくる。
「 家系図 」には生死に関わる時と場所は明記されてても
いきさつや死因までは載っていない。
E子、ごめんやけどそこまで調べようと思ったら
今度は正真正銘の探偵さんに依頼しないと。

信心深いE子が言葉を続ける。

「 命日、いつ?また勤行あげとくわ。」

涅槃の「 尋ね人 」は、それを煩わしいと思うだろうか。
それとも
「 え?ホンマ?へへ、ほな頼むわ。」
と気さくに笑うだろうか。

( おしまい )