2024年12月30日(月) 05:10 JST

えぇんだか、悪いんだか。

なんてこたぁない、日曜日のお昼時。
師走の店内はお客さんで賑わい、厨房では義兄が
いそがしくうどんや丼を品上げしていた。

「 ガタン!」
カウンターの奥で大きな物音がしたなと思って中を覗くと
オヤジの身体が床に横たわっていた。

「 おとうちゃん!どないしたん!」

これまでもちょこちょこ厨房内で滑って転ぶことがあった。
驚きの中にも「 またか。」があり、心配の中にもどこか
「 また復活してくるんちゃうん?」という潜在意識があった。

「 どうしたん?どこで滑ったん?どこか打ったんか?」

の問いかけに、ただただ「 痛い 」だけを連呼するオヤジ。
とりあえず身体を起こして様子をみようとしたところで
様子が一変した。
顔は血の気が引いて真っ青になり
口はだらしなく斜めにいがんだまま
カッと見開いた目は白眼をむいてしまった。

「 アカン、救急車やわ。」
実姉 keshidama さんが躊躇なく受話器を取って119番した。

ほどなく意識は戻ったものの、話ができる状態ではなく
脳梗塞や持病の心臓( 1年前にバイパス手術 )骨折の心配も
あるので、お客さんがお食事する中をタンカで移動
そのまま救急車のお世話になった。

「 このまま恐らく入院だろうな。いや、ヘタすると…」
なんて縁起でもないことを考えては払拭しながら
オヤジと keshidama さんがいなくなったあと
義兄とパートのみつ子さんと3人でそのあと店を切り盛りした。
そう、親がたおれても、営業である。

…で、いつ連絡が入るのかなぁとヤキモキしていたら
客足がようやく途切れ夕陽が店内に差し込むような頃になって
オヤジと keshidama さんが帰ってきた。

「 (・_・) えっ?大丈夫なん?」

どうやら滑って転倒したのではなく、椅子に腰掛けたまま
意識を失い、そのまま倒れ込んだらしい。
CT検査、心臓、血液検査、すべて異常なし。
倒れ込んだ拍子にどこかで打った背中も骨に異常はなく
打撲で済んだ。

原因は不明。とりあえず色んな可能性を探るべく
今後、外来で検査することになった。

大騒ぎしたが、結局店はいつもの時刻に店じまい
夕方、キッチンでは何事もなかったかのように
オヤジがいつものように夕食をとっていた。

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帰宅して主人にその日の一部始終を話した。
ぬ「 ほんま、倒れた時って、なんとも言えん形相してたわ。
   まるでゾンビみたいやってんで。
  間違いなく脳梗塞か、ヘタしたらこのまま逝ってまうと
   思って必死で呼び掛けたわ。」
旦「 お前、ようそんな縁起でもないこといえるなぁ。」
ぬ「 だって、ほんまやもん。」

出産もそうだが、生死の狭間って、ドラマの場面みたく
そんな綺麗なものではなく、現実は目を背けたくなるような
光景がほとんどだと思う。
私もそんなことがシラっと言えるほど歳を重ねてしまった。

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あれから2週間。
「 こないだみたいに倒れてもすぐ元に戻るから
  慌てて救急車呼ばんで(呼ばなくて)えぇで。」
開店前のまかない時にオヤジがおもむろに言った。
今にして思えば何か自覚症状があったのだろう。
開店して程なくまた厨房で「 ガタン 」と音がした。
振り返るとオヤジが手鍋を持ったまま床に横たわっていた。
1分ほど白眼をむいて意識を失っていたがほどなくお目覚め
ただ、頭からは血を流していた。
…放って置くわけにはいかない。
本人の意思など無視して119番だ。
救急車内での問診で気丈にふるまうオヤジ。
よほど入院させられるのがいやなのだろう。
自分に都合の悪いことは一切しゃべらない。
横から私がチクり倒してやった。(笑)←笑い事やない。

頭の傷は幸い軽傷(要観察だけど)結局2週間前とほぼ同じ状況で
またまた夕刻にご帰宅となった。
ちなみに、やはりこの日ももちろん営業である。
1日でも休んではいられない。

オヤジ、あなたの楽しみでもある買い出しは明日は私が行く。
それから、先生の言うこときいてえぇかげんにビール止めや。