2024年12月22日(日) 01:58 JST

バレンタインデーの思い出・2

もう20年以上前のこと。

それなりにいろんなお付き合いがあり
バレンタインデーといっても
さしてドキドキ感はなく
余裕こいて手作りチョコを本命、義理
分け隔てなくふるまっていた
イケイケねぇちゃんのぬいいとさんでしたが
ひとりだけ、思いの違う方がいました。

当時、栄養士として働いていたR製薬社員食堂に
よく来てくださっていた広報部長のTさん。

恰幅がよい働き盛りのナイスミドルで
もちろん妻帯者。
ちなみに鶏肉料理が苦手。
鶏肉メインのランチしか残っていない時は
カウンターまで来られて爽やか笑顔で
メインディッシュの交換を注文されます。
なんてこたぁないしがない食堂娘が
なれなれしく喋りかけれる方じゃなかったので
二言三言話ながらランチ皿を手渡しできる
その瞬間が唯一幸せを感じる一時でした。

「 なんとかチョコを渡したい!」

他のお客様の手前、大層なモノは渡せない。
あの方のランチ皿にコソッとちっちゃな
ハート型チョコを入れて手渡そう。

ランチの献立を作成する二週間前から
作戦を練りました。
バレンタインデー当日のメニューは
Aランチは鶏肉料理。
Bランチは超人気メニュー。
Tさんはいつもピーク時間をすぎた頃に
やってくるので、その頃にはBランチ売り切れ
Aランチしか残ってなければTさんは
カウンターまで必ずやってくる。
チャンスはそこしかない!
自分の思いのたけを伝えるために
社員さん400名のお昼ご飯を巻き込む…
職権乱用も甚だしいもんです。(笑)

そしてバレンタインデー当日。
胸ポケットにハート型プチチョコを携え
ランチタイムに挑むぬいいとさん。
思惑通り、超人気メニューのBランチは
早々に売り切れ、ヨッシャァと心の中で
拳を握りしめるぬいいとさん。
やがてTさんが遠くからやってくる姿が
見えました。

「 舞台は整った! 」

と思った瞬間、女性社員さんのひとりが
Tさんの元へかけよりチョコを手渡す光景が。
ひとりだけじゃない、姿が見えてから
カウンターにこられる30メートルほどの間に
2・3人はチョコを渡されてたでしょいか。
…気後れしてしまいました。
「 もしかしてこんなちっちゃな
  チョコなんて、こどもだまし?」
計算通り、Tさんはカウンターにこられ
メインディッシュの交換をオーダー。
絶好のタイミングだったにもかかわらず
結局チョコをお皿に忍ばせることは
できませんでした。

ランチタイムが終わり胸ポケットに忍ばせた
チョコを取り出すとフニーっと、とろけてました。

「 まだあたしにもこんなウブなところが
  あったのねぇ〜。(T▽T)」

こういって自分で自分を慰めてました。

Tさん、もう定年迎えたかな?
どんなシルバーエイジを送ってらっしゃるのかしら。
いたずら心で「 ささみ 」だけは
黙って何食わぬ顔でお出ししてたけど
お召し上がりになってましたよね。
「 実は『ささみ』も鶏肉である。」
なんてことにその後気づいたかしら?
エへへのへ♪