2024年3月19日(火) 15:43 JST

過払い金請求

生前、父はカードローンで借金をしていた。
道楽や賭け事のためではなく、お店の運転資金のためだ。
私達がお店の台所事情にノータッチだった当時はわからなかったが、父が86歳でバイパス手術をして入院した時を機に
父やお店にくる郵便物をチェックしだしてから発覚。
確認すると8,000円ほどあった返済残額が返せずに
そのまま5年ほど放置されていて18,000円弱に膨れ上がっていた。

「ゲッ‼倍以上になってるやん!」

その未払金が、当時の台所事情の中では
返済の優先順位が限りなく最後尾に近いものである
ということは察していた。
かといってこのまま増え続けていくのを黙って見過ごすのもなにやら腹が立つ。

「しゃぁない。」

我が家の家計から持ち出して返済した。

それから2年ほど経ってからメディアで頻繁に流されている過払い金請求のことが気になって

「そういえばあの返済完了したカードローン
 どんな感じなんかなぁ?」

と、ダメ元で調べてみることにした。

まずは「取引履歴」のお取り寄せ。
カード会社に電話すると、まずは本人さん(父)を
電話口に出せという。
そやな、今は何でも本人確認やもんな。
かといって認知症が進みつつある父に難しいことを言っても混乱するだけなので
父の状況を先方に話し、極簡単な質問だけを受け付けるということで了解をもらって父に受話器を手渡した。

「お父ちゃん、とにかくあちらさんの言うことに
 『ハイハイ』いうて答えてくれたらえぇから。」

「よっしゃ、よっしゃ♪」

名前、生年月日、住所、電話番号…
そしておそらく先方からあとの難しいことは娘さんに任せていいですか?とでも訊かれたのであろう

「ハイハイ、全て任せますのでよろしくお願いします。」

と応えて私に受話器を返してきた。

一通りの説明を受け、この電話から一週間ほどして届いた郵便物は
「取引履歴申請書」
電話1本だけでは事は進まない、。
コレに必要事項を記入し送り返して初めて物事が動く。
合わせて父の代わりに私が動くことになるので委任状が必要となってくる。
文面はワープロで名前だけ本人の直筆で、は、NG。
すべて本人さんの直筆でお願いしますときた。
便箋に鉛筆で下書きをし、父の頭が比較的シャキッとしているおふろ帰りをめがけて筆をすすめてもらう。
1~2年前の父ならなんてこたぁない事務作業だったろうが、誤字脱字満載、訂正印の花が咲いた委任状が出来上がった。
ま、コレでも法的には充分御の字である。

最初の電話の時に、問い合わせ件数が多くて申請書が会社に届いてから取引履歴が郵送されるまで1~2ヶ月かかる
とは聞いていたが、届いたのは2ヶ月をゆうに越え3ヶ月近く経った頃だった。
途中、ホッタラカシ(放ったまま)になってるのじゃないかと確認の電話をいれてみたりもしたが
その後届いた履歴書類の枚数の多さと情報量の凄さを見て納得。
「そりゃ一件でコレだけの資料用意してたら
 2~3ヶ月かかるわな。」

さて、履歴をもらったものの、何がなんだかさっぱりわからない。
あっさりクレジット会社に電話して聞いてみる。
懇切丁寧に書類の内容を解説してくれた。

結局わかったことは、当初カード1枚で借入れてたと思っていたのが、実際は3枚に及んでいたこと。
そして返済が終わったカードに関しては過払い金があるけれど、未払金があるカードも残っていたこと。
そして幸いなことに過払いと未払いを相殺した結果、結構な額の過払い金となったこと。

「え?え?どのくらい?」

ん~そやね、うちの旦那さんが60時間ほど残業した月のお給料くらい、ってとこかな?

ただ、ネット情報によると全額戻ってくることはほぼなく、5割、ヘタすると2~3割ほどしか返ってこないという。
このまま一端の主婦が交渉しても埒アカンのじゃないか?
その道のエキスパートに任せた方がいいのかな?
不安になって、司法書士さんに相談してみる。
司法書士さんはクレジット会社名と過払いの金額だけ聞くと
「それだったら8割くらいは返ってくるんじゃないかな?
 一度ご自分で交渉してみては?」
とアドバイスをくださった。

ドンピシャ、クレジット会社からは実際の過払い金の8割返還でどうですかときた。
さすが、その道のエキスパートだ。
司法書士さんに全額返還できるようお願いしたところでおそらくその2割は報酬として持っていかれるだろう。
ウマイとこ突いとる。
当然返してもらえるお金なので自力で裁判まで持っていって全額返してもらう術もあるが
父も年齢的にいつどうなるかわからない身だし、裁判する体力もない。
示談で応じることにした。

「それではお振り込みは4月の末になりますね。」

( ̄□ ̄;)!! はぁ~~~?!3ヶ月も先ってか!
うちのオヤジ、生きてるかぁ?!
…と言いたいところをグッとこらえて
「あ~、少しでも元気あるうちにそのお金で
 温泉にでも連れてったげたいんですけど
 ダメですかね?」

と、軽くお願い。アカンとは解ってたけど。

「過払い金請求」というとなんだかクレジット会社に邪気に扱われそうなイメージがあったが
この会社は大手銀行系だからだろうか、最初の電話から一貫してとても丁寧に対応してくれた。

過払い金が銀行に振り込まれたのは父が入院する前日、亡くなる約2週間前だった。

セーフ。