2024年3月28日(木) 18:07 JST

9月4日(火)

(「 9月3日(月) 」 よりつづき。)

9月4日の朝。

「 ここまでせんでも大丈夫か?」

とは思いつつ、自転車をガレージに入れぇの、洗濯場に置いてある小物を片付けぇのと、噂にきく大型台風に備えていつもよりほんの少し念入りに対策。

あまりに静かな時間が過ぎるので、エィとばかりに買い物に出かける。
台風前なのでスーパーもすいてるかなぁと思いきや、ダダ混み。
みんな考えることはいっしょやな。

「 電車停まるっちゅうのに
  台風くるっちゅうのに
 自転車組は出勤やて。
  零細企業はつめたいわ!」

と、ブチブチ言いながら朝に出かけた旦那さんがお昼に帰ってきた。

それにしても静かだ。
やっぱり大阪に台風!は来ないのか?

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9月4日の昼。

それでも徐々に雨風が強まってくる。
テレビをかけながら2階に引きっぱなしの布団の上でウダウダする。

ん?なんか、やばい。
風、強すぎる。
南向きベランダのけっこう頑丈であるはずのサッシ扉がガタガタ鳴る。
今まで聞いたことがないような異様なすきま風の音。
え?なんで?閉めてるはずのサッシ扉から雨水が吹き込む。

「 カンカラカンカンカーン!!!! 」

おい!?なんか落ちたで!!
いや、飛んできたんか?
うぁ!なんぼ(いくら)でも飛んでいきよる!
なんなん(何なの)?何が舞ってるん?
うちのん?よそのん?

なんなん!ベランダに何か横たわってる影が見えるし!
旦那さんがその影が何なのかを確認すべく扉をあけようとするが、ビクともしない。
風に押されて扉自体が湾曲してるみたいだ。

「 わ~!!アカン!ガラス割れとる!! 」

心配になって3階の様子を見に行った旦那さんが叫ぶ。
筋金入りで頑丈であるはずのサッシの扉が、なにかが飛んできて割れていた。
いつもY太が寝ている寝床、そして小一時間ほど前まで私がうたた寝していた寝床の上にガラスの破片が飛び散っている。
台風来るのが夜中でなくて良かった。
Y太の頭に直撃してるところだ。

うぁ、耳までキーンとなってきた。
電車乗ってトンネルくぐった時になるアレだ。
ふと命の危機を感じたと同時に雪の顔が浮かんだ。

「 雪も恐がってるはずだ。」

同じ大阪市内のマンションにひとり住いしている長女・雪に電話する。

「 雪、大丈夫か? 」
「 ヤバい。」
「 危ないからガラスからは離れときや。 」

駆けつけてあげたいけど、呼び寄せたいけど、あとの祭りだ。
せめて少しでも心細くならないようにと、何度か電話をいれる。

成す術がない。
もう台風が通り過ぎるのを待つしかない。
あと1時間?2時間?
つけていた扇風機やテレビが消える。
ミシミシと家が鳴る時間が続く。

゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆

9月4日の夕方。

ようやく風雨もおさまり、外の様子を確かめに出る。

さきほどベランダに横たわっていた影は、我が家の雨といだった。
家の回りには見覚えのある屋根瓦が落ち、割れて散乱していた。
上を見上げるまでもなく、その瓦は我が家のものであるとすぐに認識。

「 おたく、電気点いてまっかぁ?」

「 い~や、ぜんぜん。」

「 ほな、うちだけやないねんなぁ。」

停電が自分の家だけではないとわかるとなぜかホッとする。
でも道路隔てたすぐ向かいの界隈の電気が点いていると、ちょっと腹が立つ。

雪に電話してみる。

「 恐かったなぁ、そっちは電気、大丈夫か?」

「 うん、大丈夫、点いてるで。」

…ちょっと腹が立つ(笑)。

日が沈むとみるみるうちに暗くなり、町内はブラックアウト状態に。
家中の懐中電灯をひっぱり出す。

「 おとなりのおばあちゃん、大丈夫やろか?」

明かりのない中、ひとりでは心細すぎる。
様子を見に行き、懐中電灯があるのか尋ねると
「 うちにもあるよ♪」
といって差し出してくれた。
点灯チェック。
…電池、入ってない。(´・ω・`)
よかった、見ておいて。
我が家の乾電池を入れて事なきを得る。

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9月4日の夜。

まだ電気がつかない。
おもむろにY太がトランプを広げ始めた。

「 ババ抜きしようぜ。」

「 あ、ババ、2枚とも入れてしもた。」

「 ほなジジ抜きやな。」

「 ババ抜きって、何十年ぶりやろ。」

真っ暗なキッチンテーブル上で懐中電灯はさんで親子3人のババ抜き大会

新鮮な気分もつかの間、すぐに飽きる。

停電中だけどガスと水道は通ってる。
食材もあるので夕飯を作ろうと思えば作れるが、どうにも作る気になれない。
換気扇が使えなくて、部屋に匂いがこもるから、という言い訳を無理からつくって外食することにした。

駅前にある大手チェーンの定食屋さんへ。

「 30分ほどお待ちいただけますか?」

お客さんの入りはさほどでもないが、店員さんが少なすぎて手がまわらない様子。
バッシング、手伝ったろか?

それにしても、いつまで停電が続くんだろう。
と、そんなときにlineが入る。

「 そちらはまだ停電のようですね。
  何か協力できることがあればおっしゃってね。」

道路隔てたすぐ近くのマンションに住むママ友からだ。

「 ありがとー、冷蔵庫の中の食材が気になって、、、」

夜遅くにもかかわらず、食材を預かってもらえることになった。
(ー人ー) ありがたき幸せ。

食材が無駄になる心配もなくなり、日付ももう変わろうかとしていたので、さぁもう寝ようかと寝床に入った頃に灯りがもどってきた。

( 「9月5日(水)」へつづく。)